【書評】『自壊する帝国』 佐藤優

外交官であり、諜報活動員であった筆者による、ソ連崩壊のルポルタージュ
 
筆者はノンキャリの外交官として、また諜報活動員として冷戦末期のモスクワに派遣される。そこで筆者はソ連の政治家、外交官、学生、ジャーナリスト、市井の人々などと交わり、様々な情報を収集していた。ソ連が崩壊へと向かう激動の時代、目まぐるしく変わる情勢の中で筆者が見たものとは。
 
「時代の変わり目」に立ち会った人の手記を読むにつれ、その筆者は大きく2種類に分けられることに気付く。時代の変化に気付かないまま翻弄される人と、時代の変化を読み解き自分の望む方向へと動かそうとする人。この本の筆者は、まぎれもなく後者である。良質な知性と、またとない機会とが組み合わさったとき、後世に記録される「歴史」が生まれる。そんな歴史の胎動を感じさせてくれる一冊。おすすめ