【書評】『やりたいことがある人は未来食堂に来てください』 小林せかい

「あなたが世の中に軋みのように感じる「違和感」をヒントに、皆が理解できるレベルまで落とし込めば、それはあなただけの、あなたにしかできない取り組みになる」。そう語る筆者による、何かを始め、続け、伝えていくためのヒント。
 
筆者は全くの料理未経験から、「未来食堂」という定食屋を開業した。なぜそれを始めたのか、そうやって続けたのか、いかにしてそれを伝えていったのか、筆者の頭の中を克明かつ分かりやすく解説した一冊。誰も得していない「当たり前」を見つける、作業量ではなく作業時間で管理する、弱みを見せることで応援してもらえる、自分自身の「ふつう」の基準を上げる努力をする、即断の為に判断軸を作る、などなど。その言葉は論理的かつ一本筋が通っているため、読んでいて違和感なく筆者の考えが理解できる。
 
特に感動したのが「5倍ルール」の話。自分自身の「ふつう」の基準を上げるために、自分が提供したい内容の5倍の価格のものに慣れ親しむこと。例えば筆者であれば、800円の定食を提供しているので、その5倍の4000円の食事屋に意識して通っている。同じ価格のところでは、学ぶにしてもどうしても劣化コピーになってしまう。だから自分のものよりはるかに高級なところで、「ふつう」の基準を上げていく。自分の感じた「違和感」を大事に、あたらしい「ふつう」をつくっていく。大上段に構えるのではなく、自然体であるために、自然と応援したくなる一冊。いちおし