【書評】『異文化受容のパラドックス』 小坂井敏晶

「日本は「閉ざされた社会」であり「開かれた社会」。日本の異文化受容を説明できるかどうかは、このパラドックスを解明できるかどうか」。そう語る筆者による、日本社会の異文化受容の仕組みについて。
 
日本は独自の文化を持ちながら、外来の文化を取り入れ、それを自家薬籠中の物にしてきた。独自文化の保持と、異文化の受容。この一見相反する要素を、日本社会はどのように両立させてきたのか。筆者はこれを免疫システムに例えて説明する。製品名に外来語が多用される理由、広告に西洋人が起用される意味、脱亜入欧の現在、日本文化の特殊性、などなど。異文化受容というパラドックスに対しての、興味深い考察が並ぶ。20年以上前に書かれたとは思えないほど、筆者の論考は今でも輝きを失わない。日本の西洋化を社会心理学の立場から考察した一冊であり、いま世界が直面する異文化との共存について一石を投じる一冊。おすすめ