【書評】『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』 ジョセフ・ヘンリック

「ヒトという種は、習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念など成長過程で他者から学ぶ「文化」への依存度を高めながら進化してきた」。そう語る筆者による、人類と他の生物を分けた、進化の軌跡について。
 
ヒトは肉体的な力が弱く、俊敏さにも欠ける。持久力は高いが、ヒトより持久力の高い生物は存在する。しかも有毒な植物を無毒化する機能が貧弱なため、加熱調理しなければ食べられない食物も多い。知能は優れているかもしれないが、例えば道具を何も持たせずに熱帯雨林や寒冷地にヒトを送り込めば、他の生物よりもはるかに高い確率で全滅する。では何がヒトをこの世界の覇者にしたのだろうか。ヒトの「賢さ」の種類、探検隊と土着民の違い、持久力の高さを活かせないヒトの決定的弱点とその克服法、香辛料が多くの料理に使われる理由、社会集団の規模が重要なわけ、他者から学ぶために必要なこと、などなど。人類が「文化」をテコに、いかに進化していったか、いかに繁栄の道を歩んでいったかがよくわかる一冊。おすすめ