【書評】『教養としての社会保障』 香取照幸

より多くの人がリスクを冒してでも自己実現の挑戦できる社会のために、セーフティネットである社会保障が存在する」。そう語る筆者による、社会保障の入門書。

社会保障の系譜や理念、制度の体系から、日本の社会保障における基本哲学、産業としての社会保障、さらには目指すべき国家像と、それを実現するための社会保障の改革案まで。巨大で複雑であるがゆえに敬遠されがちな、社会保障の全体像を示した力作。筆者が繰り返し述べるように、社会保障は制度の全体像(マクロの風景)と、市民一人一人にとってのミクロの風景とが、大きく乖離していることに難しさがある。だから社会保障を語る上では、本書に記載されているような「教養としての」社会保障の知識は、全ての人が持つべきものではないだろうか。一点突破で全ての問題が解決するはずもないほど複雑な社会を、理解するための補助線となる一冊。おすすめ