【書評】『政談』 荻生 徂来

「国を治めるというのは、碁盤に縦横の筋を付けるように、全体を見渡した計画に基づいて物事を進めていくこと」。そう語る筆者による、経世の書。
 
筆者は江戸中期、徳川吉宗のブレーンとして活躍した人物である。開闢以来第一の人物と同時代人に激賞された大学者であり、新井白石の終生のライバルでもあった。経済が政治の第一である理由、江戸封建制度の根本的病理、人事を重視すべき理由、人の能力を見極めるポイント、「癖」のある人物をどう使いこなすか、仕事を早く終わらすべき理由、などなど。数百年前に書かれたとは思えないほど、現代の我々にとっても有益かつ興味深い話が続く。長く残る書物には、変わらない人間の本質を喝破した深い洞察が含まれている。古典を読む楽しさと、実践的思索の妙を存分に楽しめる一冊。おすすめ