【書評】『ミッドウェー海戦 第一部 知略と驕慢』 森史朗

太平洋戦争の転換点となったミッドウェー海戦。当時の作戦関係者への膨大なインタビューから、その全貌を探る大作。第一部は利根四号機の発艦まで。
 
開戦から半年、日本海軍は負け知らずであった。その中心であった第一航空艦隊は、練達のパイロットと優秀な機体に恵まれ、無敵艦隊として太平洋に君臨していた。史上最強とも謳われた艦隊は、たった一度の戦いで壊滅し、戦争の主導権は二度と日本軍の手に戻ることはなかった。山本、南雲、山口といった提督たちの素顔から、各空母の艦長の人となり、司令部の参謀から一パイロットまでの豊富な証言、などなど。様々な登場人物の心の内面や組織力学にまで踏み込み、戦争の帰趨を決した戦いを余すところなく記述した一冊。「負けに不思議の負けなし」との言葉通り、負けるべくして負けた戦い。戦いの結果を知っている者からすれば、随所にちりばめられた負けの伏線が痛々しいほどである。いちおし