【書評】『南北戦争』 小川寛大

国史分水嶺となった、南北戦争。今なお米国に影響を与え続けるこの戦いの解説書。
 
日本で「戦前」「戦後」といえば、太平洋戦争の前か後かを示す。だが米国においては、それは南北戦争の前か後かを示す。米国が経験した唯一の内戦であり、当時の人口の10%が出征し、全人口の2%が戦死した戦争であった。さらに塹壕戦や電撃戦、総力戦、通商破壊、戦略爆撃など、後の世界大戦で見られる戦争の萌芽でもあった。連邦政府と州政府との力関係、奴隷解放運動家の誤り、共和党が全国政党になったわけ、奴隷解放宣言の功罪、奴隷解放思想が広まったきっかけ、リンカーンの政治家としての凄み、などなど。米国を知るうえで大きな補助線となる、南北戦争がよくわかる一冊。おすすめ