【書評】『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』 大木毅

大日本帝国の軍人たちは、どのような言葉を残したのか。史料に当たるだけではなく、彼らの生の声を聴いた筆者らによる、大日本帝国陸海軍の真実。

太平洋戦争は今に続く様々な教訓を残した。その証言者たちはいかに語り、記録者たちはいかにそれを後世に残そうとしたのか。そして数々の証言から浮かび上がった、日本軍の意外な姿とは。日本軍における名将の条件、山本五十六がカリスマであった理由、ミッドウェイで利根4号機の発進が遅れた理由、海軍が中途半端な作戦しか立てられなかったわけ、ハードウェア志向の行きつく先、司令部要員が少ないことのデメリット、台湾沖航空戦の最大の教訓、などなど。人口に膾炙した「通説」ではなく、丹念な裏取りと証言から歴史の新たな一面を暴き出す。太平洋戦争史としてだけでなく、歴史研究のあるべき姿についても考えさせられる一冊。おすすめ