【書評】『アメリカ空軍史から見たF-22への道』 夕撃旅団

史上最強の戦闘機、F-22。そこに至るまでの米空軍の長い道のりを追ったノンフィクション。
 
上下巻に及ぶこの長い長い物語は、2人の知られざる天才を中心に展開する。1人は戦略爆撃を近代的な理論にまとめ上げた、ハロルド・ジョージ。米空軍は元々戦略空軍として生まれた。敵の軍隊を相手にするのではなく、敵中枢を直接攻撃するために、長距離爆撃機と核ミサイルを中心とした編成であった。この考えが第二次世界大戦の勝利をもたらしたと言っても過言ではない。だが朝鮮戦争あたりからは、戦闘機は軽視されたため、ろくな性能を持つ機体は開発されてこなかった。もう1人は 戦略空軍の道へとどめを刺した、ジョン・ボイド。米空軍は彼の主導により、制空戦闘機の王道F-15、世界的ベストセラーとなったF-16、艦載機の概念を覆したF/A-18などを開発し、再び制空権を取り戻した。そしてその流れの先に、最強の名をほしいままにしているF-22がある。米空軍の誕生から、F-22、そして今後の展開までを追った力作。驚くべきことに、筆者はこれだけの大著をほとんどネット上の公開情報だけで著しているのだ。とはいえ読みづらいところは全くない、軍事の初心者からマニアまで楽しめる一冊。おすすめ