ハインリヒ・シュリーマンは伝説的な人物である。幼い日にトロイの神話に憧れ、長じてもその憧れを持ち続け、商売で大成功を収めた後に発掘調査に乗り出し、一介の素人が本当にトロイの遺跡を発見する。巷間語られてきたシュリーマンのイメージである。だが彼の言動をつぶさに追ってみると、自伝を書くたびに異なる逸話を物語り、虚言癖で様々な人物の信用を失い、事実を捻じ曲げることに良心の呵責を感じない人物であった。偉人の素顔を暴く一冊であるが、筆者も述べているように彼は英雄になるべく奮闘し、その驚嘆すべき成功のゆえに、古今を通じて最も象徴的な考古学者であり続けている。功罪共に巨大な、考古学の巨人の真実に迫る一冊。おすすめ