【書評】『トランス・サイエンスの時代』 小林博司

「現代は科学と政治の領域が次第に交錯していくトランス・サイエンス状態にある」。そう語る筆者による、科学技術と社会の関係について。
 
かつて科学は、誰が見ても間違いのない客観的真理を政治権力へと供給するという立場であった。だが近年においては、「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域」として、科学と政治が交錯する領域が広がっている。英国ではBSE事件により科学者への信頼は崩壊し、科学技術コミュニケーションの課題は「啓蒙」から「信頼の構築」へと変わったように、科学者の社会への関わり方も変容を迫られている。この他にももんじゅ裁判、コンセンサス会議などを通じて、「科学技術と社会を再びつなぐ」道を探る一冊。科学リテラシーのない日本でこそ読まれるべき一冊。おすすめ