【書評】『昭和史』 半藤一利

「歴史は正しくきちんと学べば、教訓を投げかけてくれる。だがその意思がなければ、歴史はほとんど何も語ってくれない」。昭和史の権威が語る、1926年から1945年までの20年間の歴史の総集編。
 
昭和元年に蒋介石は北伐を始め、ソ連社会主義国家建設を進めていた。つまり昭和とは、巨大な隣国である中国が統一に向かい、仮想敵国のソ連も新しい国づくりを始めた時代。そんな幕開けの昭和に、いかに日本がダメになっていたかを語る一冊。犬養毅ワシントン条約において犯した過ち、マスコミと陸軍との結託の歴史、国が孤立化するということの真の意味、国家総動員法が史上まれにみる悪法である理由、ノモンハン事件以前のソ満国境、などなど。なぜ勝てない戦争に日本が突き進んでいったのか、泰斗が語る言葉の一つ一つは静かな重みをもって教訓を伝えてくれる。特に巻末の、昭和史の20年間から学べる5つの教訓は、日本人なら必読であるといっても過言ではないと思う。また同時に、現代の日本にも通じる教訓であることに背筋が寒くなる。おすすめ