【書評】『「新自由主義」の妖怪』 稲葉振一郎

「我々はマルクス主義に匹敵するような体系的イデオロギーとして「新自由主義」なるものがあると考えるべきではない」。そう語る筆者による、社会哲学者の目から見た新自由主義の正体。
 
新自由主義」と呼ばれる一連の思想は、それ自体が大きな思想のくくりであるため、その中にさまざまな思想を内包している。だがそれはマルクス主義や宗教の会派、宗派のように、明確な共通項を持つものではない。それは新自由主義市場経済にしか興味がなく、かつてのマルクス主義のように思想の潮流になりえないからだ。ではこれからの世界は、何をよりどころにすればいいのだろうか。
 
経済学や思想史のバックグラウンドのない人間にとっては、非常に難解で骨の折れる一冊。経済学それ自体ではなく、社会学者の目から見た経済学の役割についての視点が興味深い。一度だけではなく、手元に置いて何度も読み返したくなる一冊。おすすめ