【書評】『反共感論』 ポール・ブルーム

「共感は愚かな判断を招き、無関心や残虐な行為を動機づけることも多い」。そう語る筆者による、共感が人間に与える負の側面について。
 
センセーショナルな事件や、痛ましい事故のニュース。これらを見ると、我々は被害者に共感を覚える。だがそれよりもはるかに大きな犠牲に対して、我々がほとんど関心を示すこともないのも、また事実である。1人の犠牲者に対する共感と、100名の犠牲者に対する共感は、100倍も違うわけではない。共感は感情に訴えかけ、大勢よりたった一人を重視するよう私たちを仕向ける。だから共感は我々の判断を誤らせやすい。
 
今まで誰もが当たり前に持っていた共感という感情、そのネガティブな効果について余すところなく語った一冊。異論・反論も多い一冊だが、世界の見方に新たな一面を提示する一冊。おすすめ