【書評】『「役に立たない」科学が役に立つ』 エイブラハム・フレクスナー、ロベルト・ダイラクラーフ

「科学はミシシッピ川のように、遠い森の中の小さな流れから始まり、無数の源流が集まって、力強い川が形成される」。そう語る筆者による、基礎科学の重要性について。
 
筆者は米国のプリンストン高等科学研究所の所長を務め、また公共政策への提言も幅広く行う人物である。そんな筆者の目から見た、「役に立たない」基礎科学の重要性とは。基礎科学が重要な5つの理由、想像力と好奇心の違い、高等研究所に最大の効果を発揮させる方法、基礎科学がいかに我々の生活に影響を及ぼしているか、などなど。地道で地味な基礎科学こそが、我々の科学技術の基礎となり、生活を豊かにしていることがよくわかる一冊。静かな語り口の中から、力強い信念とゆるぎない論理がにじみ出る一冊。「科学技術立国」を標榜する我が国が目指す姿がここにある。おすすめ