【書評】『捨てられる銀行3 未来の金融』 橋本 卓典

「会社組織の成否は、会計やコスト計算では数値化できない「計測できない利益や損失」によって決定づけられている」そう語る筆者による、金融システムの未来について。
 
筆者によると、金融とは「顧客の一方的不幸」を商売としている仕事になる。金融の不確実性と、情報の圧倒的な非対称性を武器に、顧客からの一方的な収奪により金融業界は利益を得てきた。だがそういった目で見えること、表面的、形式的なものを過信し、「計測できない世界」に無為無策だったことの因果応報として、現在の金融業界の苦境がある。では金融業界はいかにあるべきなのか、志ある金融マンたちの事例を通じて、金融の未来を探る一冊。
 
「捨てられる銀行」シリーズの三作目であるため、筆者の基本スタンスは前二作と大きく変わらない。だがこの三作目には、これまでにない迫力がにじみ出ている。銀行が「捨てられる」時代、銀行はいかにあるべきか、銀行の未来はどこにあるのか、銀行は生き残れるのか、そんな筆者の危機感が溢れた一冊。持続可能な社会とは何か、これからの時代で選ばれるために何をすべきか、仕事の代価とは何か、などなど。金融に関わる者だけでなく、そうでない者にも、深く考えさせられる一冊。おすすめ