【書評】『成熟社会の経済学』 小野善康

「成熟社会にとっての国際競争力とは、自国の人々が喜ぶモノやサービスを見つけ出す能力、つまり内需を創り出す能力のこと」。そう語る筆者による、成熟社会での長期不況を克服する処方箋。
 
日本のような成熟社会と、発展途上国とでは、経済の仕組みが異なる。発展途上国では供給が需要より少ない状態だから、とにかく供給量を増やすことが求められる。日本人が得意とする、既存の製品をより安く効率的に作ることなどがこれに当たる。一方、供給過多で需要の少ない成熟社会でこの方法を採ると、 かえって失業や売れ残りが拡大して不況を深刻化させる。ところが財政支出によってこれまでになかった設備やサービスを提供できれば、その便益分が丸々国民経済への貢献となる。
 
経済ニュースの見方が変わる一冊であり、モノ余りの21世紀にこそ、読まれるべき一冊。おすすめ