【書評】『世界史の誕生』 岡田英弘

「歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈する営み」。そう語る筆者による、本当の意味での「世界史」の指南書。
 
世界に文明は数あれど、自前の歴史文化を持っているのは、地中海文明中国文明の2つだけ。その「西洋史」と「東洋史」、これら2つの歴史は歴史館も論理も独立に出来上がっているので、本来別々の文脈を持つ者ものである。それらを無理やりくっつけたのが現在の「世界史」であるが、これでは教える方も学ぶ方も、話の筋が通らない。筆者は地中海世界と中国と、それぞれが同時の発展を遂げた結果が現在の世界であると主張する。そのうえで、「世界史」が始まったのはグローバル化が始まったモンゴル帝国からだとみる。
 
「世界史」を学ぶ上での違和感を解き明かしてくれる一冊であり、二項対比で歴史の新たな見方を提示してくれる一冊である。歴史を見る目が変わる一冊。おすすめ