【書評】『日本の半導体四〇年』 菊地誠

戦後まもなくから、一貫して半導体の基礎研究を行ってきた筆者が語る、日本の半導体が世界を席巻するまでの記録。

筆者ははじめは通産省の研究所で、後にソニー中央研究所で、40年にわたり半導体の基礎研究を行ってきた、日本のエレクトロニクスの生き字引ともいえる人物である。そんな筆者が語る、戦後日本のエレクトロニクス秘話。筆者が実感した日米の技術格差、その格差を克服した日本人のある特徴、機械工学が栄えていたスイスでエレクトロニクスが発展しなかった理由、工業化のために必要なエネルギー、ICが信頼性を確保できる理由、研究から生産へと移るタイミング、などなど。筆者自身が述べるように、電子は見えず、触れもしない。だが筆者の軽妙かつ真摯な語り口からは、電子が、半導体が、そしてその産業の勃興が、目に見えるようである。おすすめ