「和食は、何もしないことを最善とする」。そう語る筆者による、和食という思想の入門書。
【書評】『ジャガイモの世界史』 伊藤章治
「ジャガイモは貧者のパンとして、歴史の転機で大きな役割を果たしてきた」。そう語る筆者による、ジャガイモの歴史。
今や我々の食卓に欠かせない食べ物の一つである、ジャガイモ。その伝播から普及、世界史に果たした役割までの、知られざる歴史を追った一冊。欧州でジャガイモの普及が遅れた理由、フランス料理に名を遺すジャガイモ普及の恩人、ロシアで発生したジャガイモが原因の反乱、長崎とジャガイモの意外な接点、男爵いもの語源、などなど。知っているようでよく知らない、身近な食品の歴史がよく分かる一冊。おすすめ
【書評】『リーダーたちの日清戦争』 佐々木雄一
明治日本にとって、近代国家として初の本格的な対外戦争である日清戦争。政治面から見たその戦争の実態をまとめた一冊。
軍事は政治に隷属する。そのため戦場での勝敗以上に、政治外交での優劣が戦争の勝敗に影響する。にもかかわらず、戦場での武勇伝は広く知られているが、その戦争時の総理大臣が誰であったかまでは、あまり知られていない。おまけに日清戦争は、のちの日露戦争に比べてマイナーな戦争でもある。だが近代国家としては初めての本格的対外戦争であり、また東アジアの盟主である清を相手にした戦争でもあるため、日本近代史では欠かせないターニングポイントとなる出来事である。日清戦争の開戦の政府決定について、伊藤博文が慎重論を唱えたわけ、陸奥宗光が清に対して強気に出た理由、シビリアンコントロールがうまくいったわけ、三国干渉が日露戦争の伏線となった真の理由、などなど。戦争以前の東アジア情勢から、戦後の余波と日露戦争への道まで、日清戦争を広く深く知るための一冊。おすすめ
【書評】『When 完璧なタイミングを科学する』 ダニエル・ピンク
ものごとを為すのに、最適なタイミングは何か。そんな筆者の疑問から始まった、"How to"ではなく"When to"の本。
何かをするためには、タイミングが重要である。だがそのタイミングを科学的に分析した一冊。朝型人間と夜型人間の違い、運動を午前にするメリットと午後にするメリット、一年の計が元旦にあるわけ、プロジェクトが大きく進展するタイミング、ピクサーの映画に共通するエンディングの法則、未来形がある言語の弊害、などなど。適切なタイミングを知り、効果的なタイミングを計るための知恵が満載の一冊。おすすめ
【書評】『文明の人口史』 湯浅赳男
人口という切り口から、世界史と人類史を紐解く一冊。
【書評】 『多拠点で働く 建築・まちづくりのこれから』
場所にとらわれず働く。コロナ禍を経て市民権を獲得した、新しい働き方を実践する人々の記録。
人類は、移動する生物である。誕生の地アフリカを出て世界に広がったように、我々のDNAには移動することが刻み込まれている。本書で紹介されている9組もまた、1つの拠点だけでは飽き足らず地域をまたいだ活動を行っている。多拠点生活を始めたきっかけ、地域へ溶け込むコツ、移動をメリットに変える方法、地方での仕事の見つけ方、家賃や交通費などコストのこと、拠点を選ぶポイント、などなど。多拠点で働くメソッドが山盛りの一冊。多くの人にとって、憧れこそすれ実践は難しいかもしれない。だがすぐそこまで来た未来の働き方に、わくわくさせられる一冊。おすすめ