【書評】『リーダーたちの日清戦争』 佐々木雄一

明治日本にとって、近代国家として初の本格的な対外戦争である日清戦争。政治面から見たその戦争の実態をまとめた一冊。
 
軍事は政治に隷属する。そのため戦場での勝敗以上に、政治外交での優劣が戦争の勝敗に影響する。にもかかわらず、戦場での武勇伝は広く知られているが、その戦争時の総理大臣が誰であったかまでは、あまり知られていない。おまけに日清戦争は、のちの日露戦争に比べてマイナーな戦争でもある。だが近代国家としては初めての本格的対外戦争であり、また東アジアの盟主である清を相手にした戦争でもあるため、日本近代史では欠かせないターニングポイントとなる出来事である。日清戦争の開戦の政府決定について、伊藤博文が慎重論を唱えたわけ、陸奥宗光が清に対して強気に出た理由、シビリアンコントロールがうまくいったわけ、三国干渉が日露戦争の伏線となった真の理由、などなど。戦争以前の東アジア情勢から、戦後の余波と日露戦争への道まで、日清戦争を広く深く知るための一冊。おすすめ