【書評】『習得への情熱』 ジョッシュ・ウェイツキン

かつてチェスの神童として世界大会で優秀な成績を収め、22歳から習い始めた太極拳でも世界選手権のタイトルを獲り、ブラジリアン柔術でも屈指の実力を誇る筆者。種類の異なる分野で次々と頂点を極めた筆者による、なにかを習得するための方法論。
 
頂点に立つものと立てない者の差はどこにあるか」。チェスであれ、武術であれ、その他の技術や競技であれ、何かを習得しようとする人が一度は抱く疑問である。型を忘れるための型」と筆者が呼ぶ基本の徹底、定期的に自分のスタイルを解体すること、テクニックのエッセンスだけを抽出すること、といった技術面での習得。敗戦を日常的に経験すること、ソフトゾーンに入ること、自分にとって最良のパフォーマンスをもたらす感情、といった精神面での鍛錬。この2つの柱から、習得への情熱を呼び覚ます一冊。冗長で回りくどい表現や、筆者独特の言い回しなど、決して読みやすい本ではない。だがその行間から、上達へのヒントが得られる一冊。いちおし