【書評】『バッタを倒しにアフリカへ』 前野ウルド浩太郎

若き昆虫博士の、異国での奮闘を綴った抱腹絶倒の一代記。
 
全身緑のふざけた筆者の写真とか、「ウルド」っちゅうよくわからんミドルネームとか、そもそも何を言いたいのかよくわからんタイトルとか、様々な情報がこの本を「バッタもん」扱いするには十分である。だが一読すれば、その評価が540度くらい違うことに気づかされる一冊である。おおむねは筆者の専門であるバッタの生態や、バッタ研究の意義などの研究日記である。だがその合間に強制的に紛れ込む、波乱万丈の筆者の人生が、博士号を取った者たちの悲哀が、異国での生活の知恵が、筆者の人々に対するまなざしが、読む者の心を熱くする。読みやすくテンポのいい文体で、普段読書をしない人にこそ、手に取ってほしい一冊。おすすめ