【書評】『第二次世界大戦 勝利を実現した革新者たち』ポール・ケネディ

「国家であろうと軍であろうと、巨大組織が「大戦略」を実行するには、トップと中間層と現場のそれぞれの働きがすべて重要となる」。そう語る筆者による、第二次世界大戦での中間層の努力や工夫を描いた一冊。
 
第二次世界大戦に勝利した連合国は、なぜ勝利できたのか。国力を考えれば、勝利は当然の結果とも言える。だが数多の技術者の活躍がなければ、その国力を活かしきることができず、戦争は1945年に終わっていなかったかもしれない。Uボート退治、ドイツ本土爆撃、電撃戦、水陸両用作戦、東京への道、という5つのテーマで、連合国の技術者たちが、参謀将校たちが、いかに勝利をつかんでいったかが述べられている。筆者が繰り返し主張するように、たった一つの「魔法の道具」だけで戦況は変化したりしない。それゆえP51やT34、ヘッジホッグ、護衛空母などの伝説的な兵器も、単体では戦局を動かしえない。それらの兵器を適切に活かす運用と、それを可能にする組織こそが、第二次世界大戦の影の主役であったのだ。膨大な史料から、名もなき人々の活躍の軌跡を描き出す、名著の称号にふさわしい一冊。いちおし