【書評】『ザ・モサド』 D・アイゼンバーグ

サブタイトルは「世界最強の秘密情報機関」。その名に恥じぬ、モサドの活躍の軌跡を追った一冊。
 
イスラエルは人口約700万人、面積は四国と同じくらいの小さな国である。小さな国でありながら、建国以来常に四方を敵に囲まれ、紛争が絶えない国でもある。そんなイスラエルが今日まで生き残ってこられたのは、「己を知り」質量ともに優れた軍隊の育成だけではなく、「彼を知る」諜報組織の暗躍があってこそである。ナチスユダヤ人虐殺の責任者であるアドルフ・アイヒマンの執念の追跡、当時最新鋭戦闘機であったミグ21の強奪、今世紀最大のスパイとも言われたエリ・コーエンの物語、などなど。たとえ結末を知っていても、手に汗握る迫真の描写でページを繰る手が止まらない。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもの。下手なスパイ小説が裸足で逃げ出す、リアル007の物語。40年前の作品ではあるが、その魅力は全く色あせていない一冊。いちおし