【書評】『コシヒカリ物語―日本一うまい米の誕生』  酒井義昭

美味いコメの代名詞ともいえる、コシヒカリ。その誕生から現在に至るまでの歩みを追った意欲作。
 
「コメ品種の寿命は10年」と言われている。そんな中、コシヒカリは1956年の誕生から23年後の1979年に作付率1位になり、現在でも2位にトリプルスコア以上の差をつけた圧倒的王者である。コシヒカリ誕生までの数々の偶然と必然、弱点が多いながらも採用されたわけ、後に確認された様々な長所、魚沼のコシヒカリが有名な理由、コシヒカリとその一門が隆盛を誇ることの弊害、コシヒカリを超えるコメが出てきづらい理由、などなど。普段何気なく食しているコシヒカリが、多くの人々の努力と強運とに支えられていることがよくわかる一冊。現在「打倒コシヒカリ」を合言葉に、多くの地方で独自米の開発が進められている。そんな中でも圧倒的な強さで君臨する、コシヒカリの凄さがよくわかる一冊。おすすめ