【書評】『気候変動と「日本人」20万年史』 川幡 穂高

気候変動という切り口から、日本人の歴史を再定義した意欲作。
 
歴史を大きく動かす要因の一つとして、気候変動がある。中国史では冷害や大雨などにより飢饉が発生し、時の王朝が倒されるというのはよく見る光景である。日本史においても、源平合戦で平家が負けたのは、西日本での飢饉が原因とも言われている。筆者が人類史と気候変動を組み合わせたことで、見えてきた新しい歴史の形とは。東北地方での冷害の受けやすさ、人類の脳容量が増加したきっかけ、縄文時代には東日本の方が人口が多かった理由、三内丸山遺跡が大規模集落を維持できたわけ、奈良の大仏による公害について、モンゴル帝国が勢力を急拡大できた理由、などなど。今まで習い覚えてきた歴史の、「なぜ」に答える名著。随所に見え隠れする、筆者の深い教養にもしびれさせられる一冊。いちおし