【書評】『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 大木毅

この世の地獄とまで呼ばれた独ソ戦、新史料をもとにその真実に迫る一冊。

時には数百万人がぶつかり合う大戦闘のみならず、ジェノサイド、収奪、捕虜虐殺などが繰り返され、3000万人以上が死亡したとも言われる独ソ戦。なぜそのような悲惨な戦争が起こったのか、どのように戦争は進行したのか、勝敗を決したものは何だったのか。クラウゼヴィッツの後裔たちの誤謬、日露戦争ソ連軍にもたらしたもの、クルスク会戦の勝因と敗因、ヒトラーが最後まで抗戦した理由、などなど。あまりにも論ずべき点が多い戦争だけに、この一冊だけで独ソ戦の全てが分かるわけではない。だが世にあふれるほかの大著を読み解くうえで、貴重な補助線となる一冊。おすすめ