【書評】『香川にモスクができるまで』 岡内大三

香川にモスクをつくる。あるムスリムコミュニティとそのリーダーの奔走を追ったノンフィクション。
 
ノンフィクションライターである筆者は、ひょんなことからあるインドネシア人と知り合う。彼は溶接工として働きながら、日本人の妻と3人の娘を養い、在日ムスリムのリーダーを務め、そして香川にモスクをつくろうとしている。そんな彼とその仲間たちの挑戦を追った、波乱万丈の物語。
 
国内には18万人以上のムスリムがいるという。そんな彼らの姿は、マクロな視点で描かれることこそありすれ、一人一人の個性やリアルな姿は見えづらい。だがここで描かれているのは、家族や仲間を大事にし、前向きに生きる市井の人々である。なぜ彼らがモスクを必要としているのか、日本人が行っている差別と偏見のリアル、技能実習生の現実、ムスリムと日本文化の共通点、などなど。我々の近くにいながら、ほとんど知る機会のない隣人たちの奮闘記。読めばきっと、勇気をもらえる一冊。おすすめ