2018-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『国家はなぜ衰退するのか 上』 ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン

国家はなぜ衰退するのか。経済学者である筆者が、この大きすぎる問いに挑む意欲作。 盛者必衰の理の通り、いかに栄華を誇った国家もいずれは衰退する。そこにはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。上巻はその前段階、国家がいかに繁栄するかについ…

【書評】『英雄の書』 黒皮伊保子

脳科学の観点から、「英雄」となるための条件を探る一冊。 失敗を恐れるな、勝ち癖をつけろ、夢ではなく「使命」を語れ、誰かのために強くなる、などなど。巷間言われている「成功の条件」それらは脳科学から見れば論理的に説明できるもの。「英雄」となるた…

【書評】『一汁一菜でよいという提案』 土井善晴

「一汁一菜とは、「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います」。そう語る、料理研究家である筆者による、シンプルな食のすすめ。 日本には「ハレ」と「ケ」を区別して、ケの日常は慎ましく、必要最小限の食…

【書評】『健康格差 不平等な世界への挑戦』 マイケル・マーモット

世界医師会長を務めた筆者による、健康と格差に関する「不都合な真実」。 2012年の世界の平均寿命は70歳だが、シエラレオネの46歳から日本の84歳まで、38年もの開きがある。それはなぜなのか。ロンドンでは、ウェストミンスター駅から東へ1駅行くごとに、平…

【書評】『投資家が「お金」よりも大切にしていること』 藤野 英人

「投資の最大のお返しとは、明るい未来のこと」。そう語る筆者による、投資家として長年考えてきた「お金の本質」について。 色がついていないからこそ、お金には私たちの考えや態度が100%反映される。そして我々があまり考えることの少ない、お金の使い方に…

【書評】『異文化受容のパラドックス』 小坂井敏晶

「日本は「閉ざされた社会」であり「開かれた社会」。日本の異文化受容を説明できるかどうかは、このパラドックスを解明できるかどうか」。そう語る筆者による、日本社会の異文化受容の仕組みについて。 日本は独自の文化を持ちながら、外来の文化を取り入れ…

【書評】『経済は地理から学べ!』 宮路秀作

「地理とは『地球上の理』」。予備校で地理を教える筆者による、地理から見た世界経済。 インドでIT産業が栄えた理由、オランダがEU内で重要な理由、オーストラリアが白豪主義を脱した理由、アンカレジ空港が復活できた理由、水力発電の真の利点、などなど。…

【書評】『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』 ルトガー・ブレグマン

これは、欧州の気鋭の知性による、新世代の経済学である。 シンギュラリティにより、人類はAIによって隷属させられるという悲観論が広がっている。隷属なき道は、人類には残されていないのだろうか。 筆者は豊富なデータと研究成果を駆使し、それに断固たる…

【書評】『答えのない世界を生きる』 小坂井敏晶

「答えのない世界を生きる」。パリ第八大学で哲学を教える筆者による、この世界で異端であることの存在意義について。 これは、混沌とする社会に生きながらも、答えを探せというメッセージではない。革新的なアイディアは、常にその当時の「異端」から生まれ…

【書評】 『鄙の論理』 細川護煕、岩國哲人

1991年刊行の、当時の熊本県知事と出雲市長による地方開発論。 その主張するところはシンプルだ。東京一極集中ではなく、「鄙(ひな)びた」地方にこそ、成長と躍進のチャンスは潜んでいる。自らの地方行政の成果から、筋の通らない霞が関の理論まで、リレー形…

【書評】『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』 武藤北斗

「会社の役割というのは、その人が幸せに生きていくためのサポートをするという一点に尽きる」。そう語る筆者による、新しい働き方の指南書。 筆者はパートを合わせても11名の、小さなエビ加工会社の経営者である。東日本大震災で石巻の工場を失い、多額の借…

【書評】『ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊』 塩野七生

ギリシア人の物語、第Ⅱ巻は民主政の黄金期であるペリクレス時代から、衆愚政に陥りギリシアが衰退するまで。 ペリクレス時代と、その後の衆愚政。あまりに対照的なその2つの時代の比較を通じ、民主政とは何か、衆愚政とは何かを問う一冊。ギリシアのポリス群…

【書評】『年収は「住むところ」で決まる』 エンリコ・モレッティ

「ハイテク産業では、成功が成功を呼び、多くの成功企業が連鎖的に生まれる」。そう語る筆者による、「場所」に注目したイノベーション論。 従来型の製造業は、比較的容易に海外へと生産拠点を移せる。だがイノベーション産業は、移転させることが非常に難し…

【書評】『経済は世界史から学べ!』 茂木誠

「理論の中ではどちらも論証可能でも、経験や歴史を通じてのみ、何が正しいか判断することができる」。予備校で世界史を教える筆者による、歴史を題材とした、経済学の入門書。 経済大国の西ドイツがユーロに加わった理由、江戸幕府が鎖国を決めたもう一つの…

【書評】『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』 佐々木健一

これは、知られざる偉業で世界の空の安全を確立した、一人の気象学者の伝記である。 かつて、空の旅は危険と隣り合わせであった。毎年のように航空機の墜落事故が起き、18か月に1度の割合で離着陸時に突然起こる「謎の墜落事故」で100名を超す人々が一瞬にし…

【書評】『第四次産業革命』 クラウス・シュワブ

ダボス会議の創設者が語る、第四次産業革命の衝撃。 筆者はダボス会議(世界経済フォーラム)で多くの識者と議論を行い、世界の政治と経済をリードしてきた。そんな筆者が考える「技術革命」の多面的な影響、それに対して取りうる対応とは。巷間語られている内…

【書評】『スポーツ国家アメリカ』 鈴木透

「ある意味で米国は、スポーツと社会との連携を再構築することで、近代の限界や矛盾を克服し、理想の国を作ろうとする壮大な実験をしてきた」。そう語る筆者による、スポーツで読み解く、アメリカの成り立ちと現在について。 得点を入りにくくする「オフサイ…

【書評】『人事の超プロが明かす評価基準』 西尾太

「人事制度とは、個々人の能力を伸ばす「人を成長させる仕組み」」。そう語る筆者による、人事制度・人事評価の要諦とは。 人事制度や人事評価は、人事以外の人からは非常に評判が悪い。なぜなら、評価基準が不明確かつ属人的で、何をしたら評価されるのかが…

【書評】『法人営業 利益の法則』 山口英彦

地味でつまらない商材を扱いながら、仕事のダイナミズムや自分の力量を感じられる法人営業。法人営業の講師を務める筆者による、B2B営業で「儲ける」勘所とは。 筆者が提案する「顧客深化の営業モデル」とは、エントリー客をつかむ、顧客との関係を深める、…

【書評】『遊牧民から見た世界史』 杉田正明

「「民族」や「国民国家」という枠組みから最も遠いと思われてきた遊牧民を中心テーマに据えて、その興亡・変転のあとを辿ってみたい」。そんな筆者の思いから生まれた、ユーラシアの歴史を遊牧民という視座から見た歴史書。 ユーラシアは世界最大の大陸であ…

【書評】『スターバックス成功物語』 ハワード・シュルツ

世界有数のコーヒーチェーンとなった、スターバックス。そのCEOが語る、成功の秘訣とは。 偶然口にしたスターバックスのコーヒーにほれ込み、半ば無理やりスターバックスに入社した筆者。最高のコーヒーを届けるという使命を抱き、急速に事業を拡大させてい…

【書評】『桶川ストーカー殺人事件 遺言』 清水潔

これは、一介の雑誌記者の義憤の物語である。 筆者が取材に関わった、桶川駅前で起きた殺人事件。ストーカー被害に悩まされ、身の危険を感じていた被害者の再三の訴えにもかかわらず、埼玉県警は動かずに事件は起きてしまった。それに加えて、埼玉県警は事件…

【書評】『セーラが町にやってきた』 清野由美

「戦略あっても計算なし。悩む前にまず行動」そんな台風娘が、小さな町に旋風を巻き起こした記録。 この物語は1994年春、長野オリンピックを目前に控えた、長野県小布施町という小さな町から始まる。日本好きのアメリカ人、セーラ・マリ・カミングスが町にや…

【書評】『レッドムーン・ショック』 マシュー・ブレジンスキー

米ソ宇宙開発競争の舞台裏を描いた意欲作。 この長い物語は、1944年のオランダから始まる。ナチスが開発したV2ミサイル、その遺産をめぐる米ソの主導権争い、核開発競争とその輸送手段をめぐる競争、スプートニクショック、アメリカの人工衛星打ち上げまでの…

【書評】『自壊する帝国』 佐藤優

外交官であり、諜報活動員であった筆者による、ソ連崩壊のルポルタージュ。 筆者はノンキャリの外交官として、また諜報活動員として冷戦末期のモスクワに派遣される。そこで筆者はソ連の政治家、外交官、学生、ジャーナリスト、市井の人々などと交わり、様々…

【書評】『やりたいことがある人は未来食堂に来てください』 小林せかい

「あなたが世の中に軋みのように感じる「違和感」をヒントに、皆が理解できるレベルまで落とし込めば、それはあなただけの、あなたにしかできない取り組みになる」。そう語る筆者による、何かを始め、続け、伝えていくためのヒント。 筆者は全くの料理未経験…

【書評】『90秒にかけた男』 髙田昭

「一所懸命、瞬間を生きていると、うまくいかなくても「失敗」と感じなくなる」。そう語る筆者による仕事論。 筆者は長崎の一介のカメラ屋を、わずか10年ほどでTV通販の雄に育て上げた、立志伝中の人物である。そんな筆者の経歴からは想像もつかないほど、穏…

【書評】『モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」』 エフライム・ハレヴィ

「どちらが裏の世界で、どちらが日の当たる表の世界なのか。ほんとうのところ、自分でもよくわからない」。世界最強と言われる、イスラエル秘密情報機関の長官を務めた筆者による回顧録。 イスラエルは四方を敵に囲まれ、国土が小さいことから戦略的な縦深性…

【書評】『リスクと生きる、死者と生きる』 石戸諭

「生き残った人は、どう語り継いでいくかという問いの過程を、生きている」。東日本大震災、原発事故の取材手記。 筆者は震災直後から三陸沿岸の取材に関わり、原発事故の取材の一環でチェルノブイリも訪れている。筆者も語るように、複雑な感情を、例えば「…

【書評】『「働き方」の教科書』 出口治明

当代屈指の教養人である筆者による、仕事と人生の楽しみ方の指南書。 日本人の年間労働時間は、多く見積もっても2000時間。1年間は8760時間だから、仕事はその23%に過ぎない。だからこそ失敗を恐れず、楽しんで仕事をすべきである。驚異的な読書量と、幅広い…