2020-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『貧困脱出マニュアル』 タカ大丸

「貧困は罪悪であり、病であり、全ての悪の根源である」。そう語る貧困家庭から売れっ子通訳となった筆者による、貧困から抜け出すためのバイブル。 競輪選手、力士、民泊オーナーなど、具体的な職業名を挙げながら、また具体的な心の持ち方や行動を例にとり…

【書評】『占領史録』 江藤淳

ポツダム宣言受諾から、連合国軍が日本各地に進駐するまでの、さまざまな交渉、命令、談話、などをまとめた一次史料集。 文庫版でも、上下巻合わせて1500ページを超える膨大な分量に圧倒される。降伏受諾の使者をどこにどうやって送るかに関する日米双方のや…

【書評】『北朝鮮へのエクソダス』 テッサ・モーリス

冷戦期に実現した、日本から北朝鮮へのエクソダス(脱出)。その実像を追ったノンフィクション。 1959年から1984年にかけて実施された「帰国事業」により、9万人以上もの在日朝鮮人とその縁者となる日本人が、北朝鮮に渡った。在日朝鮮人の祖国願望に応えたヒ…

【書評】『歴史とは何か』 E.H.カー

「歴史的事実という地位は、解釈の問題に依存する」。そう語る筆者による、歴史哲学の古典的名著。 筆者は1961年の1月から3月にかけて、ケンブリッジ大学で同名の連続講演を行った。本書はその内容をまとめたものである。歴史家の仕事とは何か、歴史的事実と…

【書評】『マーケティングを学ぶ』 石井淳蔵

マーケティング論の泰斗による、これからのマーケティングの形について。 「モノが売れない時代」とは手垢のついた言葉であり、常態であり前提でもある。ではそのような時代において、企業はどのようにして戦略を練り、どのように組織体制を整えていくべきか…

【書評】『結局、ウナギは食べていいのか問題』 海部健三

絶滅危惧種であるウナギは、食べていいのかどうか。ウナギ研究者がウナギにまつわる様々な疑問に答える一冊。 環境省や国際自然保護連合(IUCN)により、絶滅危惧種に指定されているニホンウナギ。どちらの指定でもトキなどと同じ、上から2番目に危険度の高い…

【書評】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』 正垣泰彦

「「良いものが売れる」という考えは、天動説と同じ。自分たちにとって都合よく世界を見ている」。そう語る筆者による、外食経営の指南書。 筆者は青果店の2階で「サイゼリヤ」を創業した。客が全く入らなかったことから、朝4時まで営業時間を伸ばした。とこ…

【書評】『50 いまの経済をつくったモノ』 ティム・ハーフォード

「 私たちは進歩することができる。現代生活は問題と課題だらけだが、感謝するべきことはたくさんある」。そう語る筆者による、50のモノを軸とした現代経済の解説書。 現代文明を代表する発明と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。電球、蓄音機、ロ…

【書評】『科学立国の危機: 失速する日本の研究力』 豊田 長康

「博士課程修了者数も、学術論文数も、どちらもGDPに相関する」。データを基にそう語る筆者による、「科学立国」日本の現状。 筆者は長きにわたり、大学の研究者として、また大学経営者として活躍してきた。そんな筆者に見えてきた、科学立国の危機。天然資…

【書評】『ザ・モサド』 D・アイゼンバーグ

サブタイトルは「世界最強の秘密情報機関」。その名に恥じぬ、モサドの活躍の軌跡を追った一冊。 イスラエルは人口約700万人、面積は四国と同じくらいの小さな国である。小さな国でありながら、建国以来常に四方を敵に囲まれ、紛争が絶えない国でもある。そ…

【書評】『やり抜く力 GRIT』 アンジェラ・ダックワース

「偉業というのは、小さなことを一つ一つ達成して、それを無数に積み重ねた結果である」。そう語る筆者による、才能よりも大事な「やり抜く力」を身につけるためのルール。 成功するためには何が必要だろうか。我々はつい「天賦の才」を重視して、「努力」を…

【書評】『オスマン帝国』 小笠原弘幸

オスマン帝国史の専門家による、最新の研究成果を踏まえたオスマン帝国の歴史。 「ヨーロッパの病人」と蔑まれた、欧州列強の草刈り場。かつてのオスマン帝国とは、そんなイメージで語られる存在だった。トルコ人にとっては退廃と衰退の黒歴史、支配下にあっ…

【書評】『ゼロのちから――成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11』 ナンシー・ルブリン

「NPOは「ゼロのちから」を知っているから、少ないもので多くをやるのが上手い」。そう語る筆者による、非営利組織に学ぶビジネスの知恵。 筆者は非営利組織を通じて社会の問題解決を図る、社会起業家である。NPOは多くの場合、人手は足りず、資金は不足し、…

【書評】『矛盾社会序説 その「自由」が世界を縛る』 御田寺圭

「弱者救済の優先順位は、世間に「かわいそう」だと思ってもらえる要素をどれだけ持っているかの序列に支配されている」。そう語る筆者による、現代社会の抱える矛盾について。 アメリカで殺処分される犬は、黒い大型犬ばかりだそうだ。そのような犬ばかりが…

【書評】『バッタを倒しにアフリカへ』 前野ウルド浩太郎

若き昆虫博士の、異国での奮闘を綴った抱腹絶倒の一代記。 全身緑のふざけた筆者の写真とか、「ウルド」っちゅうよくわからんミドルネームとか、そもそも何を言いたいのかよくわからんタイトルとか、様々な情報がこの本を「バッタもん」扱いするには十分であ…