2021-01-01から1年間の記事一覧

【書評】『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 大木毅

この世の地獄とまで呼ばれた独ソ戦、新史料をもとにその真実に迫る一冊。 時には数百万人がぶつかり合う大戦闘のみならず、ジェノサイド、収奪、捕虜虐殺などが繰り返され、3000万人以上が死亡したとも言われる独ソ戦。なぜそのような悲惨な戦争が起こったの…

【書評】『劣化するオッサン社会の処方箋』 山口周

「最近の古いもんはいったいどうなっているのか」。古い価値観に凝り固まり、不寛容で、排他的な、劣化した「オッサン」への処方箋。 いい年をしたオッサンによる不祥事が絶えない昨今、なぜオッサンは劣化したのか。そうしたオッサンにならないためにはどう…

【書評】『戦車将軍 グデーリアン』 大木毅

第二次世界大戦で連合国を驚愕させた、ドイツの電撃戦。その電撃戦の父とまで呼ばれる、グデーリアンの評伝。 急降下爆撃機で敵後方を撃滅し、戦車の打撃力で敵陣を粉砕し、機械化歩兵の機動力で制圧する。第二次世界大戦劈頭のドイツ軍の圧倒的な強さととも…

【書評】『21Lessons 21世紀の人類のための21の思考』 ユヴァル・ノア・ハラリ

知の巨人が挑む、21世紀を生きる我々が直面している21のテーマについて。 筆者は『サピエンス全史』で人類の過去を、『ホモ・デウス』で人類の未来を描いた。満を持して挑む次なるテーマは、人類の現在。世界中でノスタルジックな夢想が広まったのはなぜか、…

【書評】『一下級将校の見た帝国陸軍』 山本七平

「我々が内に持つ問題点は、その外面的変化の華々しさに関係なく、何らの解明も解決もされずに、そのまま残っている」。フィリピンで砲兵少尉として戦った筆者が語る、今に続く帝国陸軍の問題点。 なぜ帝国陸軍は敗れたのか。政治的に見れば組む相手を間違え…

【書評】『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』 ジョセフ・ヘンリック

「ヒトという種は、習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念など成長過程で他者から学ぶ「文化」への依存度を高めながら進化してきた」。そう語る筆者による、人類と他の生物を分けた、進化の軌跡について。 ヒトは肉体的な力が弱く、俊敏さにも欠ける…

【書評】『「豊かさ」の誕生』 ウィリアム・バーンスタイン

「世界がいつ、どこで、どのように繁栄を始めたかを知ることによって、私たちは世界がどこへ向かっているのかを、より正しく予測することができるかもしれない」。そう語る筆者による、英雄の出てこない世界史。 諸行無常とはよく言ったもの。これまで数々の…

【書評】『社会を知るためには』 筒井淳也

「 「社会は思い通りに動かせるものではない」という事を実感しないと、社会をちゃんと動かすことはできない」。そう語る筆者による、社会の入門書。 筆者は社会学者として、社会の様々なことを研究している。社会学は他の学問とは違い、「まだ知らないこと…

【書評】『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』 名和高司

「問題解決は総合芸術である」。そう語る筆者による、ビジネスフレームワークの活用法。 単純な問題解決能力だけでは、いずれAIに駆逐されてしまう。人間にしかできない価値は何か。コンサルとして、大学教授として、活躍する筆者が見つけた答えとは。WhyとH…

【書評】『テムズとともに -英国の二年間-』 徳仁親王

「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうかなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まっ…

【書評】『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 アーリック・ボーザー

何かを学ぶために、最適な方法は何だろうか。政策面から学びについての研究と提言を行う筆者による、学びの指南書。 人は学ぶ生き物である。何かを学ぶことで、そしてその学びを共有することで、人は文明を発展させてきた。学習過程をより効率化させるための…

【書評】『生物の中の悪魔』 ポール・デイヴィス

「生物は、今日までに確立されている『物理法則』には背いてはいないものの、今のところ未知である『別の物理法則』は必要としている」。量子力学の創始者として知られるシュレーディンガーの言葉である。同じく物理学者である筆者が語る、「情報」という概…

【書評】『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』 山口 周

「21世紀はすでに「大きな問題」は解決されてしまっているので、問題解決能力が富を創出することはない」。そう語る筆者により、新しい時代を生きるための思考・行動様式について。 20世紀にもてはやされた、問題解決能力、KPI管理、ルール厳守、綿密な計画…

【書評】『とんかつの誕生』 岡田哲

「日本人が海外でホームシックになった時、とんかつ、カレーライス、コロッケの三大洋食が食べたくなるという」。そう語る筆者による、明治維新以降の日本の洋食の発展史。 1872年、明治政府は天武天皇以来1200年にも及ぶ肉食禁止を解き、西洋との体格差を埋…

【書評】『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』 アダム・オルター

現代人は、1日平均3時間もスマホを使用している。我々を中毒にする依存症ビジネスの実態に迫った一冊。 スティーブ・ジョブズは、言わずと知れたアップルの経営者である。だが彼は自分の子どもには、決してiPad をはじめとするデジタルデバイスを与えようと…

【書評】『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』 頭木 弘樹

「落語はいろんな人によって話が作り替えられ(突然変異)、つまらないものは廃れていき(淘汰)、面白い話だけが残っていく」。そう語る筆者による、落語の入門書。 落語の入門書と聞けば、普通は「落語のここが面白い!」という話から始まる。だが本書では、「…

【書評】『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』 マット ウィルキンソン

「進化の途中で適応性が低下すると、最終的に有益な結果をもたらす変化であっても、途中で進化が止まってしまう」。そう語る筆者による、生命の進化の歴史。 現在の生物は、どのようにして現在の形にたどり着いたのだろうか?二足歩行のヒト、空を飛ぶ鳥、シ…

【書評】『「ものづくり」の科学史』 橋本毅彦

「互換性」と「標準化」。意識するしないに関わらず、我々が日々多大なる恩恵を受けている、「ものづくり」の基礎技術の発展史。 かつて、ほとんどのものは一点一葉で製造されていた。そのため、ある一つの部品が壊れれば、その部品を一から作り直さねばなら…

【書評】『遅刻の誕生』 橋本毅彦

日本人の時間感覚はどこから来たのかを、様々な切り口から探った一冊。 明治初期に来日したお雇い外国人たちは、日本人はほとほと時間にルーズであり、これでは近代化など望むべくもないと嘆くのが常であった。ところが現在では、日本の電車は世界一時間に正…

【書評】『失われた宗教を生きる人々』 ジェラード・ラッセル

中東・西アジア地域は、一般的にはイスラーム世界と思われているが、現実には他宗教の世界である、英国外交官であった筆者による、そんな多宗教世界のレポート。 中東といえばイスラーム教。確かに人口比で見ればイスラーム教徒が圧倒的だが、ユダヤ教やキリ…

【書評】『インド日記』 小熊英二

日本近代史の教授である筆者による、2か月のインド滞在の所感をまとめた一冊。 筆者が滞在した2000年当時、インドは高度経済成長とグローバリゼーションの中で、急速な社会変化と価値観の動揺、右派ナショナリズムの台頭に揺れていた。伝統と近代が混ざり合…

【書評】『変貌する民主主義』 森政稔

「多数決に同意するという事は、多数の決定をあたかも自己の決定であるかのように受け入れるフィクションを承認するという事」。そう語る筆者による現代の民主主義論。 日本において、民主主義は当たり前の制度となり、誰もがもののついでに語れるような存在…